来年のものづくり補助金について

「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業(以下、ものづくり補助金)」は、中小企業等が行う、革新的な製品・サービスの開発、生産プロセス等の省力化に必要な設備投資等を支援する事業です。

先月、令和5年度補正予算が閣議決定され、ものづくり補助金は来年も継続することが発表されました。また、中小企業庁「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金について」によると、公募は2回程度実施予定とされています。

今回は、これらの最新資料にもとづき、来年のものづくり補助金について解説していきます。

※本記事の情報は2023年12月7日時点の資料に基づくものであり、今後変更される可能性もございます。

1 応募枠

令和5年度補正予算による17次公募から、申請枠は以下の3つになります。

(1)省力化(オーダーメイド)枠

省力化(オーダーメイド)枠は、人手不足を解決し、生産プロセスやサービス提供方法の効率化および高度化を目指す取り組みを支援する制度です。補助上限は、通常750万円~8000万円ですが、賃上げを大幅に実施する事業者は最大1億円まで補助を受けることができます。補助率は、中小企業が最大で1/2、小規模事業者(※)が2/3です。

(※)本資料の小規模事業者は、中小企業基本法第2条第5項に規定する従業員20人以下(商業(卸売業・小売業)・サービス業は5人以下)の事業者等(小規模企業者)を指します。

本制度は、デジタル技術(AI、ロボット、センサー等)を活用した専用設備(オーダーメイド設備)の導入等により、革新的な生産プロセス・サービス提供方法の効率化・高度化を図る取り組みを補助するものです。ロボット単体の導入ではなく、外部のシステムインテグレータ(Sier)との連携などによりロボットシステム等を構築したものが対象となります。

活用イメージとしては、熟練技術者が手作業で行っていた組立工程に、システムインテグレータ(SIer)と共同で開発したAIや画像判別技術を用いた自動組立ロボットを導入し、完全自動化・24時間操業を実現するケースです。組立工程における生産性が向上するとともに、熟練技術者は付加価値の高い業務に従事することが可能です。

(2)サービス高付加価値化枠(通常類型、成長分野進出類型(DX・GX))

サービス高付加価値化枠は、2つの類型があります。

①通常類型

通常類型は、革新的な製品・サービス開発の取り組みに必要な設備・システム投資等を支援するものです。補助上限は、750万円~1250万円で、大幅賃上げ特例を適用した場合は、850万円~2250万円です。補助率は、中小企業1/2(新型コロナ回復加速化特例の場合は2/3)、小規模事業者や再生事業者2/3となります。

活用イメージとしては、最新複合加工機を導入し、精密加工が可能となり国際基準に準拠した部品を開発するケースなどがあります。

②成長分野進出類型(DX・GX)

 成長分野進出類型は、今後成長が見込まれる分野(デジタルトランスフォーメーション(DX)、グリーントランスフォーメーション(GX))に資する革新的な製品やサービスの開発を支援するものです。補助上限は1000万円~2500万円で、大幅賃上げ特例適用で1100万円~3500万円です。補助率は2/3となります。

活用イメージとしては、AIやセンサー等を活用した高精度な自律走行搬送ロボットの試作機を開発するケースなどがあります。

(3)グローバル枠

グローバル枠は、海外事業を実施し、国内の生産性を高める取り組みに必要な設備・システム投資等を支援するものです。なお、ここでいう海外事業とは、海外直接投資、輸出、インバウンド、海外企業との共同事業を指します。補助上限は3000万円、大幅賃上げ特例で3100万円~4000万円です。補助率は中小企業が1/2、小規模事業者が2/3です。

活用イメージとしては、海外市場獲得のため、新たな製造機械を導入し新製品の開発を行うとともに、海外展示会に出展するケースなどがあります。

2 スケジュール

令和5年度補正予算に基づく公募は2回程度実施予定とされています。また、補助事業実施期間は、いずれの公募回においても令和6年12月10日まで(令和6年12月10日までに実績報告まで完了)となっています。延長はできませんのでご注意ください。

3 その他

(1)大幅賃上げに係る補助上限額引き上げ特例の拡充

持続的な賃上げを実現するために設けられた特例です。大幅な賃上げに取り組む事業者を対象とし、従業員の規模に応じて補助上限額を100万円~2000万円まで引き上げになります。本特例を受けるためには、事業計画にて補助事業期間終了後3~5年で、以下の3つの要件を満たす必要があります。

①給与支給総額 年平均成長率6%以上増加

②事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上の水準

③毎年、事業場内最低賃金を+50円以上増額することとし、賃上げに係る計画書を提出する

これらの要件が未達の場合、補助金上乗せ分については全額返還となります。

(2)一定の投資規模がある事業者について、口頭審査を実施

補助申請額が一定規模以上の申請を行う事業者においては、交付候補者決定前にオンラインによる口頭審査が実施されます。例えば、事業申請にかかる意思決定の背景や事業実施に際しての事前のマーケティングの調査等、計画書に記載のない内容についても質問される可能性があるとのことです。

3 最後に

当社では、ものづくり補助金や東京都助成金(躍進的な事業推進のための設備投資支援事業など)の活用に向けて、随時必要な情報を提供しています。ご不明点やご質問がございましたら、どうぞお気軽にお知らせください。

◆事前相談受付中です

当社では、オンラインでの無料相談を実施しています。すでに来年の補助金活用に向けたご相談もいただいておりますので、ご検討中の方はお早めにご相談ください。

【参考資料】

経済産業省「令和5年度補正予算の事業概要(PR資料)」

中小企業庁「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金について」

「ものづくり・商業・サービス補助金」パンフレット